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2010年6月26日 (土)

量は質を凌駕する。荒木経惟の新作に寄せて

『いい顔してる人』(荒木経惟著/PHP研究所/2010年6月1日刊)

 荒木経惟氏の新作本が「また」出た。本当に何冊出せば気がすむのだろうという位に出ている。『荒木本!』(飯沢耕太郎編著/美術出版社/2006年12月10日刊)によれば1970年から2005年までに出版された本の数357冊だそうである。ということは、年に10冊出したとして既に400冊を超える出版数になるはずだ。

 今回の本はどちらかと言えば「お手軽本」に属する本であり、新作写真は一切なくて、過去の作品にことよせて「語り下ろし」た出来である。要は、「顔こそはヌードである」といういままでの荒木氏の主張をそのまま敷衍したものであり、特に最近の『日本人の顔』シリーズにつながるポートレート写真に関する考え方をおしゃべりした本である。したがって、この本における新しいい発見はなくて、唯一面白いのは昔の原宿あたりの歩道に座って、両側に弟子か何かを座らせて(左側に座っている男がライカをぶら下げているので多分弟子なのだろう)、本人はサングラスに葉巻か何かを加えて、トランクに一杯の写真を一枚100円で売っているという昔の不良性一杯の写真が再録されている部分だ。この「不良性」というところが荒木の面白いところであり、いまだにこの不良性がなくなっていないところが、荒木氏の魅力でもある。

 今、私の手元には昔の荒木氏の本『男と女の間には写真機がある』(白夜書房/1978年1月1日刊)がある。まだ、荒木経惟氏が「アラーキー」という呼び方をされるちょっと前の、まだ「エロ写真家」として認識されていて、白夜書房の末井昭と出会ったちょっと後のころの写真集(?)である。その目次からいくつか抜き出してみると「写真とは借景なのである」「私現実」「写真気は性具なのである」「わが愛、陽子」「もしガンになったら」といった具合。ほとんど今言っていることと変わりのない内容なのである。

 写真とは「真実」を「写す」ものではなくて、「偽の(借り物の)」「真実」を「写す」ものであり、それが「私」的な「真実」である。という荒木氏の主張はルポルタージュ写真にたいして『偽ルポルタージュ日記』という形で主張してみたり、『偽日記』というかたちで、日付入りカメラを操作する。

 唯一、荒木氏にとっての「真実」は「荒木陽子」という、最高のモデルであり、最大の理解者であり、最愛の人であった、陽子夫人の存在であった。その陽子夫人ももはやいない、荒木の最初の本格的な写真集ともいうべき「センチメンタルな旅」の中の写真でいみじくも表現してしまったように、「陽子の死」というものを予感していたかのように。というか、だれでも一度は死ぬのだし、それをいかに予感して撮影をするのかということである。

 最近は愛猫チロの死にも立ち会って、自分自身の前立腺ガンにも向き合って、「死」というものを前提にした自分自身の存在をかんじえいるのであろう。どこか、「死」を予感させる写真が多くなってきているのが気になる荒木氏である。

 ただし、うれしいのはそのような状態になっても、土門拳のように仏像写真や、お寺の写真という抹香臭い方向に行くことなく、未だに「人妻エロス」である荒木氏の「健全」ぶりだ。勿論、いまや人妻にも「死」を予感しながら撮影をしているのだろうが、「エロ」であることには変わりはない。

 ずっとこの「エロ写真」路線を行ってほしいものだ。そして「エロ」のまま死んでいく。できれば「ハメ撮りで腹上死」なんて一番荒木氏らしい死に方なんだけどなあ。

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