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2010年5月23日 (日)

奥寺佐渡子の「パーマネント野ばら」

「浮世床」という噺がある。ご町内の若衆が集まる床屋でのああでもないこうでもない、という馬鹿話を集めた小噺集とでも言うような噺である。『パーマネント野ばら』(西原理恵子原作/奥寺佐渡子脚本/吉田大八監督/リクリ他制作/2010年作品)もそうした風情の映画である。ただし、ここは床屋ではなくて、パーマネント屋(美容院?)なので、出てくる客たちはみんな女、それもみっちゃん(小池栄子)のラストに近い部分での台詞「そんなやったらこの町の女はみんな狂うちゅう」女ばっかりなのだ。(恋愛に)狂った女ばっかりが出てくる、狂った女のための映画(?)がこの作品なのである。しかし、最後にはその狂い方が・・・。

 脚本の奥寺佐渡子氏には思い出がある。奥寺氏が『学校の怪談』シリーズを書いていた頃なので、話は前世紀の奥寺氏がまだアメリカに脚本修業に行く前のこと。当時、『お引っ越し』(相米慎二監督)、『学校の怪談』(平山秀幸監督)とスマッシュヒットを飛ばしていた奥寺氏に興味を持った私(角田)は、映画会社の人に頼んで奥寺氏と会うことにした。こちらとしては『寄生獣』(岩明均)だったか『無限の住人』(沙村広明)だったか忘れたが、いずれにせよ講談社『アフタヌーン』の人気漫画を原作としたアニメーション(劇場用)映画かビデオを企画していて、その脚本家として既存のアニメ脚本家を使いたくなかった私は、当時新人脚本家で面白い本を書く人だと話題になっていて、おまけに美人だという奥寺氏に興味を持ったのであります。

 渋谷のホテルの喫茶店で奥寺氏と会ったのだが、その時の奥寺氏の言い方が面白かった、曰く「私が脚本を書くのは<エロと暴力>に興味があるからです」とのこと。こちらとしては『お引っ越し』や『学校の怪談』の脚本家からこんな言葉が出てくるとは思わなかったので、つい話がはずんだのを良く覚えている。おまけにこちらの作品指向にも合ってるじゃないか。とは言うものの<エロと暴力=エロスとタナトス>は創作の基本ではあり、別に特別なことじゃないけどね。しかし、こんな若い女性から荒井晴彦氏が喜びそうな言葉が出てくるとは思わなかったので、思わずニヤニヤ、ワクワクではありました。

 で、肝心のアニメの脚本の方はどうなったかって? 実に簡単。制作の企画意図を説明した後での彼女の言葉「あ、私アニメは書かないんです」だって。もうそれだけ。何で? という質問にも答えはなし。多分、当時アニメの脚本書きで何かあったのかどうかは知らないが、何かあったのだろう。だって、その後のアメリカ修業の後の作品は『時をかける少女』(細田守監督)というアニメーション映画なのである。ええっ、違うじゃんかよ・・・。という言葉もむなしく・・・。

 で、『パーマネント野ばら』である。「狂った女たち」は主人子なおこ(菅野美穂)の母親まさ子(夏木マリ)の若い男狂いに始まり、狂った父親に育てられたみっちゃんの「どんな恋でもないよりはましやき・・・好きな男がおらんなるゆうて、うちは我慢できんのよ」という純情(?)、徹底的に男運の悪いともちゃん(池脇千鶴)もギャンブル狂いで逃げた亭主が見つかったとは言っても「うん、おったけど、のたれちょった」といった具合。まさ子などの母親世代の「男狂い」と、なおこの世代の純情ぶりと、何が違うのだろうか。あるいは、なおこ達の純情はその後にまさ子世代の男狂いへの前提なのだろうか。まあ、主人公を取り巻く周囲の人物像として描かれているからか、とにかくまさ子世代の男に対する狂い方は尋常ではない。

 そして最後には,一番普通に見えていたなおこが実は一番変だったというオチになるのだが。そうか、だからカシマに会う時のなおこはいつも初恋の高校生のような雰囲気で・・・。しかし、やることは大人だけどね。

 ということは、なおこの子供もも(畠山紬)もこうした、なおこ、まさ子のような大人になっていくんだというようなラストショット。あるいは、ももは実は「いない」のだというオチ?

 考えてみれば、女をやっていくのも大変なのだなあ、という映画であります。妻とか娘じゃなくて「女」をやっていくという意味でね。

 しかし、こんなことは創作性の中で承知のことであはるけれども、これが西原理恵子氏の実体験に基づく作品だとするならば、それもそれでスゴい。まあ、鴨志田譲氏との関係だけでもスゴいけどね。

『パーマネント野ばら』は5月22日よりヒューマントラスト有楽町他でロードショー公開中です。

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» 映画「パーマネント野ばら 」何度も、聞いたよ。大丈夫だよ [soramove]
「パーマネント野ばら 」★★★☆ 菅野美穂、小池栄子、池脇千鶴、宇崎流童、夏木マリ、江口洋介出演 吉田大八監督、114分、2010年5月22日公開、2010,日本,ショウゲート (原題:パーマネント野ばら)                     →  ★映画のブログ★                      どんなブログが人気なのか知りたい← 「菅野美穂という女優の内に秘めた 感情表現に打たれた、 大袈裟に叫んだり、声を上げたり 演じると言うと、そんなことが主流だが 脇役の少し後ろあ... [続きを読む]

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