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2010年5月26日 (水)

戦時の坂本龍馬、平時の岩崎弥太郎

 岩崎弥太郎というとどうしても香川照之の顔が浮かんでくる。まあ、いまNHKで『龍馬伝』を放送している最中であり、その中で龍馬のライバルで物語の語り部になっているのが岩崎弥太郎であれば仕方がない。しかし、安芸の在の弥太郎と高知の龍馬が幼馴染だったという設定はどんなもんだろう。大体、安芸と高知では約40kmもあり、大人ならまだしも子供の時から二人が知り合いだったというのはどうにも無理がある。おまけに、三菱関係者からクレームがついたという弥太郎幼き頃の「汚さ」も「やりすぎ」か?

 多分、NHKの企画者は龍馬の<亀山社中―海援隊>の遺志を継ぐものとして岩崎弥太郎を考えていて、そのために幼いころからの龍馬について語らせたい、その後に大成功を収めた弥太郎を劇的にするためにことさら貧しい少年・青年時代を描いているだろう。事実、弥太郎を龍馬の遺志を継ぐものとして描いている伝記・小説なんかもあるようである。まあ、同じ土佐出身で明治維新の中で活躍したふたりを関連付けたいという思いは分からないではないが。

 しかし、事実は違う。ということを『岩崎彌太郎』(伊井直行著/講談社現代新書/2010年5月20日刊)は書いている。つまり、<亀山社中―海援隊>にとって貿易・商売はあくまでも政治的目的を果たすための手段にすぎない。したがって、必要になればいつでも金をせびってくる龍馬に対して、弥太郎はあくまでも会計責任者として金は支払うが決して良い思いで支払っている訳ではない。伊井は書く<坂本龍馬が、もし明治維新後も生きていれば、海援隊を貿易商社に発展させて世界に羽ばたいただろう、としばしば語られる。まんざら荒唐無稽とは思えず、なにより美しい空想である。しかし、どうだろうか。存命中の龍馬は多忙に過ぎて考える間もなかっただろうが、もし生きていれば、貿易で成功するには会社組織が必要であり、会社は利益のみを存在基盤とするものだと気づくことになったはずだ。龍馬はそのようなものに人生を賭けることができただろうか? 岩崎彌太郎はそうすることができた。>と。さらに坂本は丸山でのイカロス号水夫殺害事件にからんで、その顛末について盟友佐佐木三四郎あての書簡に<ただ今、戦争が終ったところ、しかるに岩彌(岩崎彌太郎)・佐栄の両名はかねてご案内のとおりに戦いの機略も何もなく、余儀なく敗走してしまいました。>と書いて、弥太郎のことを戦いについて何もできない奴と決めつけている。

 戦時の坂本龍馬、平時の岩崎弥太郎ということであろうか、戦いの中にあってこそ生きてくる坂本龍馬のような人間と、平時に商売で才覚を伸ばす弥太郎のような人間とでは、まったく異なった生き方があるのだ。それを同じに考えてはいけない。

 しかし、この伊井直行という作家、その名前から桜田門外の変で倒れた「井伊直弼」の関係者であり、そのことが岩崎弥太郎を書かせたのか(あまり関係はないけど)と思ったら、わざわざ<なお、私の伊井という苗字はさほど珍しいものではなく、もちろん彦根の井伊家とは無関係である。直行という名前は、父親が悪い冗談でつけたらしい。念のため>という注が付けられている。残念。

 さらに、作家である伊井氏が何故小説ではなくノンフィクションとして岩崎弥太郎を書いたのだろうか。フィクションとするに足る材料がなかったのだろうか。勿論、フィクションとしてのいくつかの仮説はすでに立てられている。それらを超える材料が見つからなかったのかも知れない。だとしたら、それはちょっと残念なことだ。NHKが出すフィクション以上の壮大なフィクションが書ければ、それはそれで面白い小説になっただろうに・・・。

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