iPadで『もしドラ』(笑)を読む
一昨日、我が家にやってきたiPad。ゲームなんかには興味がない私としては「電子書籍が読めるタブレットコンピュータ」であるiPad。ただし、コンピュータとしてはキータッチがスクリーン上なので少々やりづらい。やはり、専用のキーボードが必要になるのかもしれないが、だったら初めからノートPCを買えばいいのだし、かといってPDAとしては大きすぎるし、やはりタブレットコンピュータというのは中途半端な存在なのだろうか。
ということで、購入理由としてはやはり「電子ブックリーダー付きタブレットコンピュータ」であり、その観点からのみの感想になる。それ以外の使い勝手についてはいずれまた。
で、iPadで何を読むか・・・・・・・・・、と言ったってまだi book storeも立ちあがっていない状態では、アプリとして講談社が出した京極夏彦『死ねばいいのに』位しかない。ということで、実はこれまで読むことを我慢してきた本(笑)があるので、それを読むことにした。
『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』(岩崎夏彦著/ダイヤモンド社/2010年5月28日iPhone版ver.1.2.1発行)である。5月28日発行なのにiPhone版であるということは、私にとってのiPad最初の書籍購読体験はiPhone、つまり「iPadはでっかいiPhone」ということにすぎないものなのだ。事実、WiFi版のiPadでは大きなiPhoneというほどの使い勝手もないし、パソコンとつなげばネットも大丈夫だが、iPad単独ではまだあまり使い勝手はよくない。まあ、これからいろいろ使ってみてからということ。
しかし、なんで『もしドラ』(笑)なのだろう。同じダイアモンド社からは「本当の」ドラッカー本がやはりiPhone版で出ているし、それ以外にもいろいろビジネス関係の本も出ている。が、しかしビジネス書はあまり興味はないし、さりとてドラッカー本ではちょっとヘビーだし、ということで『もしドラ』(笑)なのである。で、なんでいちいち(笑)なのか。う~ん、要は「笑っちゃうような話」なのであります。
普通の都立高校の野球部の女子マネージャーが何の間違いかドラッカーの『マネジメント』を読んでしまい、どうせ読んだのならそこに書かれていることを実践してみたら、本当に彼女の当初の目的「甲子園に出る」を西東京地区で実現してしまった。というお話は本当に(笑)でしょう? 強豪校ばかりの西東京で、フィジカルにも劣る都立高校生が、経営学の理論武装をしたマネージャーのおかげで、1年で強くなって甲子園に出ちゃうのである。まあ、これがベスト16位までの進出だと、そこそこリアリティのある話になるのであるが、いくらなんでも代表に選ばれるのというのは「夢のようなお話」以前の問題である。
が、しかし、そこは小説でありまして、夢にもあり得ない話であってもそれが実現することを書いてはいけないなんてことは無いわけで、小説としては「あり」の話でよい。これがベストセラーになった理由は「高校女子マネージャー」という「萌え要素」と「ドラッカー」という本来ありえない出会いを、最初はちょっと無理がなくはないが、実現したところだろう。実際、筆者はAKB48のプロデューサーの一人であり、「萌え」部分ではプロである。そして、その本を読んだ「おじさん」達に、ドラッカーの本の「肝」だけを読ませてその気にさせたことが、書き手の「勝ちパターン」ですね。重要な立場にいたマネージャーが入院患者であり、それが最後には野球部の「甲子園出場」という悲願を目にすることなく死んでしまう、というお約束のストーリー。おまけにそのマネージャーの病名すら明らかにされない。要は、病名は何でもよいのだろう。つまり、彼女は「病院にいて選手の練習状況なども知らない純粋に経営学の一部でしかない」立場にいて「最後は結果を目にすることなく亡くなってしまう」という典型的な悲劇のヒロインなのだ。
という、とっても笑えちゃう話なのでマトモな本では読む気がしない。ということで、iPadが出たらiPad用の本として読んでみようかなと思っていたのだ。しかし、この程度の作品がベストセラーになってしまうというのは、「おじさん」達って、普段からまともな本を読んでないってことですね。
なお、ページめくりの際のパラパラって感じは、単なるギミックですね。かえって邪魔。どうせ「パソコン」上で読む本なのだから、普通にスクロールすればよいのである。そういう意味では『死ねばいいのに』の方が普通のパソコンらしいめくり方で良いのだが、それでも「めくる」というような動作が邪魔だ。それをいかにも「面白い」という紹介をしてきたテレビの連中やらブログの連中は、いかにも「コンピュータも本も知らない」連中だ。電子書籍が面白いかどうかはもっと別のところの問題でしょ。