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2010年4月 6日 (火)

ちくま文庫の「トンデモ本」

 ちくま文庫だからといってこんな「トンデモ本」がないと思っていた私が間違っていた。要は、こんな「トンデモ本」にもちくま文庫は目を配っていたということなのか。「ちくま文庫」という「権威」に恐れおののいていた自分がいけないんですね。要は。

 テキストは『軍事学入門』(別宮暖朗著/ちくま文庫/2007年6月刊)である。本書は、2004年、並木書房から刊行された『軍事のイロハ』を改題し、第10章を増補するとともに、大幅に加筆・訂正したものだ。内容は、軍事(と少しは政治と経済にも)にかかわる過去の各国のあり方に素材を尋ねて、今の軍事(と少しは政治と経済にも)にかかわることを述べた本である。

 基本的には、こうした「軍事」の面からのみ政治状況を捉えた本というのはなかったので、大変に参考になる部分は多かった。しかしながら、戦争が起きる要因としてこうした「経済」や「政治」を無視する態度はどうなのだろうか。別宮氏がさまざまな状況で言うのは「シェリーフェンプラン」という、ドイツの作戦プランなのだが、それは第一次世界大戦の初期には成功した方法論である。しかしながら、この同じ方法論をすべての戦争の発端に据え付けてしまう考えたはどうなんだろうか。要は「シェリーフェンプランの暴走」という言い方だ。つまり、軍部が暴走して「隣国からの国内走行権を獲得して、そのまた隣国に攻め入る」という発想である。事実、そのようなことはあるのだろうけれども、それらの「軍部の暴走」を止められなかった政府、止められなかった経済状況というものはなかったのだろうか。「軍部」というものは、特に「政治」とは密接な関係をもって仕事をしているものではないのだろうか。

 クラウゼビッツの「戦争は他の手段をもってする政治の延長である」という格言を受け入れながら、一方で「戦争には莫大な費用がかかるものです。戦争に勝利したとしても金銭的に収支があうものでは絶対にありえません。それは戦争を仕掛ける国の指導者も十分にわかっており、そのうえで戦争を始めるのです。」という言い方。まるで、戦争を仕掛ける政治家は、戦争で国の経済が疲弊することを前衛として仕掛けるというような発言です。しかし、戦争が、その背景にある「軍需産業」の要請に基づいて行われることを無視するのはどうなのだろうか。

 別宮氏は反共主義者だからどうしようもないのだろうが、レーニンの「帝国主義論」に関して記述した部分はまったく勘違いの最たるものである。国家独占資本主義段階に達した国が、外に国の範囲を求めて帝国主義戦争を仕掛けるのは歴史上の実態だし、必然であるのは目に見えている。「銀行家(産業資本家)が戦争を起こす」というのは事実である。ただし、直接的には「銀行家」は「平和主義者」である。しかし、「金融資本家・産業資本家」が関係しなかった戦争はない。別宮流では、「軍隊が戦争を起こす」のかもしれないが、そのバックには必ず「資本」があるのである。

 まあ、言ってしまえばこのテキストには「欠陥」がいくいらでもあるのであるが、ひとつ「66 平時に他国に軍隊を駐留さえるコスト」という部分は、なんであろう。確かに、自国の軍隊を他国に駐留させるのは金がかかることはよくわかる。そこまでして何で他国に駐留させるのか、それは「政治」でしょ、でもその駐留費用の大部分を駐留先の国に負担させるのはどういうことなのでしょう。つまり、日本に駐留している米軍の大半の費用は日本が出しているという事実。確かに、駐留軍の軍事費用はアメリカが出しているかもしれないが、それ以外のすべての費用は日本が出しているのだ。

 特に「75 平和運動や反戦運動が戦争引き起こす?」というテーマについては笑ってしまうしかないですね。要は、平和運動や反戦運動が盛んな国(地域)には弱い政府しかないから、そこには外国から攻め入られる要素がたくさんある、という発想である。そんなこと言ったら、「泥棒に入られないためには、みんな貧乏になればいい」という発想じゃないか。平和運動や反戦運動が盛んな国は、それだけ国民の自由な発想や発言が担保されている国であるのだから、それだけ国が豊かな国である。つまり、国防も大丈夫な国である。そんな国に攻め入ることができるだろうか。という風に発想がいかないのであろうか、と思うのだが。

 とにかく、別宮氏の「軍事」優先発想は分かるのだが、やはり「軍事」優先発想の限界も自ら示しているのだ。やはり、「軍事」の裏には「政治」「経済」があることを認めなければいけないだろう。

 ま、もっともそうなったら別宮氏の独自性もなくなってしまうかもね。

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コメント

 別にいいんじゃないの。所詮、軍需産業なんてのは、軍備を「国を守る」ということにつかっているのじゃななくて、自分の会社の利益のためでしょ。
「国益」の為に動いているような組織は今の日本には何処もないのです。

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