小三治って、知ってますか?
落語は好きである。しかし、最近寄席にも行ってないなあ。あの寄席のライブ感っていいんですね。たとえば有名になる前の三球・照代の漫才「地下鉄漫才」を、浅草演芸場で見たときは、本当になんてこんなに面白い漫才はないだろうという思いで見ていたものです。その後、テレビで売れっ子になって同じ「地下鉄漫才」をやっても、さほどは面白くなかった。やっぱり、寄席はライブだよ。ジャズと同じね。
というところに、ポレポレ東中野で「小三治」(康宇政監督/2009年作品)というドキュメンタリーをやっているではないか。この映画の存在を知らなかった。恥。
ということで早速観に行った。面白かった、というわけにはいかない。基本的には、好きな小三治の話なので面白いんだけど。「私の小三治」ってのがあるんですよね。
その昔、二つ目から真打になるときに、それまでの「さん治」から「小三治」に名前を変えたんだけど、なんで「さん」から「小さん」になるんだ、と思った時がある。「さん」から変えるんだったら、「小」がつかない名前になるんだろうと思っていたのに、「小」がついちまった。ふしぎだなぁ。落語の世界ってよくわからないや。というのが、私の感想。
つまり、小三治はさん治の時から、今の芸風は変わっていないのです。あの、面白くもなさそうな顔で、面白くもなさそうな話をしながら、実はそれが話の「まくら」になっているという、至芸。そう、小三治の至芸はこの「まくら」にあるんですよね。「まくら」だけで一席終わらせてしまったという小三治です。まあ、時間の関係でそうなってしまったんだろうし、本当はそのあと本来の話を聞かせようと思ったんだろうけど、そうもいかなくってね、というのが本音でしょう。
その「まくら」に注目して、一本の映画を作ることも可能だったろう。「小三治 まくら」なんてね。でも、そうはしなかった。それは、康監督の小三治に対しての理解の問題だろう。この監督は、多分本当に落語を理解していないかもしれない。じゃなくて「理会」かな。
しかし、この作品の最後に「鰍沢」を持ってきたのは大正解。小三治の「鰍沢」を見るのも初めてだが、本当にこんな「鰍沢」解釈も初めてである。これを、演じる小三治の姿もすごい。「俺は落語を演じる人間じゃないんだ」と考えながら演じるその姿。怖いくらいに孤独に浸りきる小三治。やはり、大名跡といえども、「怖い」話はあるんだな。と、妙に納得した映像です。
まあ、小三治を知らない人が見ても、人間ドキュメンタリーとしては、面白いかなと。
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