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2010年1月30日 (土)

カラシニコフを考える、大量死の実現という思想

『機関銃の社会史』について書いた際に(1/21「武器と戦争と・・・あと何があるの」)、スミソニアン協会の銃器研究家、エドワード・エゼルが同書の文献補遺に「この製造能力と開発能力がもたらした帰結の一つは、カラシニコフの武器がほとんどあらゆる場所に見られるようになったことである。最初に述べたように、少なくとも55カ国がAK47、AKM、およびカラシニコフ機関銃を正規の装備として使っている。これらの武器はレバノンやアフガニスタンの幼い子供の手に握られているのが見られる。それは、インドシナから、中央アメリカ、アフリカまで、政府軍兵士や反政府軍兵士によって使用されている。(中略)ロシア人の姿など一度も見たことのない辺境の地で、AK47かAKMを装備した男や女は、ロシア人が信頼できるすぐれた武器をつくることを知っている。(中略)アメリカ人はコーラを輸出し、日本人はソニーを、ソ連人はカラシニコフを輸出する」と書いたことから、カラシニコフについて考えるようになったのである。

 テキストは『カラシニコフ自伝』(エレナ・ジョリー著/山本知子訳/朝日新書/2008年4月刊)と『カラシニコフⅠ』『カラシニコフⅡ』(松本仁一/朝日文庫/2008年7月刊)。そういえば、『カラシノコフ』の方は朝日新聞で連載していた時に、しばしば読んでいたのを思い出す。

 カラシニコフ、というよりAK47と言えば、ベトナム戦争で北ベトナム軍と南ベトナム解放戦線の主要な武器として、アメリカ軍のM16と戦い、そして勝利した銃として有名である。まさにAK47は反帝国主義、反植民地主義、そして社会主義革命の象徴的な存在だったのである。

 もうちょっと言えば、AK47はスターリン主義の銃であるということなのだが、これは今回のテーマとちょっとズレるので、いずれまた。

 この、世界で一億丁を超えるといわれる歴史的に最も成功した銃は、しかし、その大半は開発国であるソ連・ロシア以外の地域で生産されたものだ。1947年に発表されたAK47はその後、ワルシャワ条約加盟国やその他の共産圏の国々にライセンスされ、それらの国々で生産された。ソ連崩壊後、つまりワルシャワ条約自体がなくなった後にも、ライセンス契約がないにも関わらず、中国では生産され続け、またパキスタンなどでは引き続き密造されている。なぜそうなのか、あるいはいまだに需要はあるのか、については『カラニシコフⅠ・Ⅱ』に詳しい。

 カラシニコフがAK47を開発した理由はたったひとつ「ナチス・ドイツから我が国を守るための武器を作りたい」というものであった。しかし、現在AK47、AKM、AK74はその発明者の意図を超えて、反帝国主義、反植民地主義などの「抵抗の武器」から、アラブ過激派・原理主義者の象徴的な意匠となってしまった。勿論、それは武器を使うものの責任であり、武器の発明者の責任ではない。「武器は思想を持たない」とは言うものの、やはり成功しすぎた武器の発明者には「テロリストの武器を開発した気分はどうか」といった無責任な質問が発せられるようだ。これは、成功しすぎた銃の発明者としては、仕方のないことなのかもしれない。

 むしろ、考えたいのは「武器は思想を持たない」「思想を持つのは武器を持つ者だ」ということについてである。本当にそうだろうか? かつてない大量に生産された銃は、かつてない大量に死者を製造した銃である。ベトナム戦争では大量のアメリカ兵や南ベトナム兵を、アラブではイスラエル兵を、アフガニスタンでは皮肉なことにソ連兵(!)を、そして世界のあらゆる場所で同じ国の国民を、死に追いやっている。そのための武器である。いっぺんに大量の死を奪い去る核兵器の思想とは違うが、やはり核兵器に匹敵する量の死を奪い去ったAK47。いまやライセンス生産されたAK47と密造されたAK47同士の殺し合いが普通になっている。これは既に思想ではないのか? つまり「大量死の実現」という思想。

 一方、我が国の自衛隊の武器、62式自動小銃や89式自動小銃などのように、多分、生産されてからただの一人も人を殺していない銃もある。つまり、実戦に一度も参加していないからね。これはこれで思想なのだ。人を絶対に殺さない兵器という矛盾した思想。

 どちらが良いのか? それはそれで難しい問題である。

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